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2022.10.06

iOSのヘルスケア機能で得られるユーザー体験――自分を知ることで見えてくるもの

  • iOSのヘルスケア機能で得られるユーザー体験――自分を知ることで見えてくるもの

こんにちは!株式会社Cosmowayが組織するデジタルプロダクション「factory4」のUIUXデザイナー新谷です。今回はiPhoneやApple Watchに搭載されている、ヘルスケア機能にフォーカスしてみました。
リモートワークが増え、普段から運動や健康に気を遣っている方も多いのではないでしょうか。そんな中、iOS(Watch OS)に標準で搭載されているヘルスケア機能がかなり秀逸なので、UIUXデザイン目線も交えながら考察していきます。

※今回の記事はウェブマガジン「CreatorZine(クリエイタージン)」さんに寄稿させていただいた記事の追記、更新版となります。

 

iOSの「ヘルスケア機能」使っていますか?

まずは、iOSに搭載されている「ヘルスケア APP」を使ったことはあるでしょうか。デフォルトでインストールされているので、アイコンを見たことがある方も多いと思います。「ヘルスケア」アプリはその名のとおり、歩数や消費カロリー、体重、血圧、睡眠時間など健康に関するさまざまな情報をまとめて記録し、共有することができます。

出典:iPhone や iPod touch でヘルスケア App を使う – Apple サポート (日本)

Apple Watchなどウェアラブル端末や別の健康アプリと連携することで、スポーツやフィットネスにも活用することができ、さらにはカロリーや水分の摂取量、手洗いの時間などいろいろな生活情報も記録することができ、それらのデータをもとにアドバイザーとして体調をサポートしてくれたりもします。

「iOS 16」では、服用している薬を管理したり確認するための新しい機能も登場したり、ヘルスケア共有はさらに充実し、睡眠アプリも大きく進化しています。こちらは正式にリリースされた段階でまた紹介できたらと思います。

自分を知ることで健康を見る目が変わる

昨今、健康志向が高まる中で、コロナ禍などもあいまって自分自身と向き合う時間も増加。個々で運動することや健康維持に対する意識も高まっている印象です。ランニングにウォーキング、ジム通い、ヨガ、食、サプリメントなどに興味のある方も増えているのではないでしょうか。Youtubeでもトレーニングのハウツー動画などは人気コンテンツとなっていますよね。

私も週2回ジムに通って筋トレやランニングを行っています。運動不足解消、身体維持、ストレス発散などが目的ですが、それに加えてデイリーでiOSのヘルスケア機能も使っています。理由は日々の自分自身を知ることで健康に対する意識やモチベーションの向上・維持が行いやすいからです。

健康データをチェックしやすいUI設計

自分の身体について知れば知るほど対策も取りやすくなり、意識が向上します。ヘルスケアアプリはアクティビティをチェックしやすいUI設計になっており、ユーザーの健康データをひとめで理解しやすい、シンプルなインターフェースとなっています。

下部のタブで概要(ホーム的な役割)で表示した項目がまとめられ、ブラウズ(確認したい項目の編集)を切り替えるシンプルなインターフェース

健康を見守る豊富なカテゴリとアクティビティ

ヘルスケアで記録できる項目は[ブラウズ]のメニューから見ることができます。アクティビティ、栄養、心臓、睡眠など十数個の大カテゴリに、さらにそこから細かい項目や詳細にわかれています。代表的な機能のアクティビティだけでも歩数や距離、上がった階数などさまざまな記録を管理でき、ひとめで確認することが可能です。

[概要]から、歩行速度や歩数などの各項目に遷移し詳細を確認する

[よく使う項目に追加]することで[概要(ホーム画面のようなもの)]にまとめて表示することで即時に確認もできますし、記録を習慣づけることで健康状態や体調管理を簡単にチェックすることができるようになります。

そのほかには、就寝時間や睡眠の内容を分析したり、聴覚をチェックする項目もあります。身近な生活習慣を記録したり、[症状]の項目では病院の問診のように症状をチェックしたりすることで、客観的な体調管理にも活用することができます。

 

実際に歩いて歩数を確認してみました

誰でも簡単に始められるエクササイズのひとつとしてウォーキングがありますが、アプリ内のアクティビティのメイン項目として歩数と距離があります。実際に歩いてその機能と正確性を測ってみました(疑問を持つことは大切ですよね!笑)

近くのコンビニエンスストアまでの距離を徒歩で往復してみたところ、自分で数えた結果は917歩でした。そしてヘルスケアの歩数は次のようになりました。

スタート時が146歩、そこからスタートし結果の歩数は1064歩となっています

スタート地点の段階で146歩あるのでここからスタート。往復し、また同じ地点に戻った歩数の合計が1064歩なので、計測では918歩となります。

これは実際の距離と歩数がかなり正確に測れていて驚きました。信憑性が増しましたね(笑)。もう少し長い距離や、服装、環境などで誤差は変わるかもしれませんが、今回はかなり正確な結果となりました。

ウォーキングに期待できる効果って?

ウォーキングを正しい方法で実践すれば、ダイエットやさまざまな病気の予防、ストレス発散といった効果が期待できるそうです。

脂肪を燃焼させることでダイエット効果
ウォーキングは脂肪をエネルギーとして利用し、体脂肪を減らす効果のある「有酸素運動」の一つで、正しい方法で行えばダイエットになると考えられます
生活習慣病など病気の予防・改善効果
上記の有酸素運動には脂肪を燃やす効果があり、そのため腸の周りの内臓脂肪を減らす効果や、高血圧、コレステロール値の改善など様々な生活習慣病の予防につながると考えられています
ストレス発散効果
ウォーキングには「セロトニン」の分泌を促す効果が期待できるそうです。セロトニンは精神の安定や安心感をもたらしてくれる脳内の神経伝達物質で、不足するとストレス過多になりやすく、うつ病などにもつながってしまう可能性があると言われています

特別な道具や環境を準備する必要もなく、身体に負担がかかりにくい簡単な運動でさまざまな健康効果があるのはありがたいですね。

※注意事項:これらはすべて個人差があり、自分の判断でウォーキングを始める前に医師に相談しましょう。個々の症状や持病のある方によって一人ひとり適切な運動量が異なるため。

参考1:厚生労働省 e-ヘルスネット「高血圧を改善するための運動」
参考2:厚生労働省 e-ヘルスネット「脂質異常症を改善するための運動」</p>

ウォーキングをする際の注意点

ウォーキングには健康に良いさまざまな効果があるとされていますが、体調や持病によって身体に負担がかかってしまう可能性もあるので注意も必要です。

無理せずマイペースで水分補給もする
準備運動・ストレッチを行なう
不安や持病がある場合は医師に相談する
スマホを見ながら行わない

ただ単にウォーキングするだけではなく、ヘルスケアアプリを組み合わせて視覚化し管理することで、自分自身の状態や達成している項目を迅速に確認し知ること。知ることで得た情報からさらに改善点や目標をモチベーションにすることで健康維持や改善に繋げることができます。これはポケットの中に入れたiPhoneがあれば、誰でも簡易的な健康管理ができるという一つのユーザー体験であると言えます。

 

iPhoneとApple Watchで睡眠管理

 iOS 14以降では、iPhoneまたはApple Watchを使って日々の睡眠管理ができます。毎日の就寝や起床の時刻を記録し、設定した目標睡眠時間と比較したり、睡眠分析チャートを表示し確認することができます。

出典:Apple Watch で睡眠を記録して iPhone で「睡眠」を使う – Apple サポート (日本)

・睡眠目標:眠りたい時間の長さを設定
・就寝時刻と起床時刻:就寝する時刻と起床する時刻の設定
・睡眠用画面:iPhone のロック画面がシンプルになりました。指定した就寝時刻になると「睡眠」集中モードがオンになり、睡眠中でも通知してもらいたい人やAppを指定しておくことができます。
・Apple Watchで睡眠時間を記録:Apple Watchを着用して眠ることで、より詳細な睡眠データを取得できます。Apple WatchをiPhoneにペアリングすれば、設定中に表示されます。

睡眠アプリは呼吸回数の記録に対応

watchOS 8(デバイスはApple Watch Series 3以降)では寝ている間の呼吸数を測定し、記録できるようになりました。「Apple Watch で睡眠時間を記録」がオンになっている場合、Apple Watchを着用したまま就寝すると、1分あたりの呼吸数を自動的に測定し、記録してくれます。

呼吸数を確認するには、ヘルスケア Appを開き、画面の下部の「ブラウズ」のカテゴリから「呼吸」をタップ。「呼吸数」から表示できます。

出典:watchOS 8

他者の見守り用途にも活用できる

ヘルスケアのトレンドは、「Apple ID」と「iOS 15」以降を入れているiPhoneユーザーであれば、離れて暮らす家族や友人に「共有」できること。活用次第で家族の見守りなど、さまざまな用途で活用できるかもしれません。

心拍数やノイズレベルの検知も

心拍数は、体の状態を監視、確認するための重要な方法のひとつです。ワークアウト中の心拍数や、安静時の心拍数、歩行中の心拍数、呼吸、ワークアウト、回復率を確認することができます。実際ランニングやアルコールを飲むと、自分の体にどれだけ負担がかかっているのかを心拍数が教えてくれました。また「心拍数 App」からの通知を有効にしておけば、高心拍数や低心拍数、不規則な心拍リズムが検知されたときに通知を受け取ることもできます。

出典:Apple Watch で心拍数を測定する – Apple サポート (日本)

Apple Watch Series 4以降の「ノイズ」Appは、マイクを使って周囲の騒音のレベルを測定します。聴覚に影響を及ぼすおそれのあるレベルまでデシベル値が上がると、これを検知し手首をタップして知らせてくれます。

※心臓発作やその他症状を常時監視しているわけではありません。また通知は所見のひとつの候補にすぎず、完全な診断ではありません。(参考)Apple Watch:心臓の健康に関する通知

 

Apple Watchの機能で助かった人々

ヘルスケア機能からは少し逸れますが、Apple Watchのおかげで不整脈や高血糖値が発覚し、医者の診断を受けることで助かった男性、森のなかを走行していたマウンテンバイクから転倒し意識を失ったものの、その強い衝撃を感知。位置情報を通報し知らせることで助かったケースなどが世界で報告されています。

緊急通報で命が助かった人たちのストーリー

Apple Watchの緊急SOS機能で、アメリカの911番など、緊急通報サービスに電話することが可能です。Cellularモデルであれば近くにiPhoneがない場合でも通報することできます。Appleが公開した動画では、車両事故や海で流されてしまった人、また作業中に怪我を負ってしまった人が、Apple Watchを使って通報。オペレーターと通話し救急隊が向かうという、緊迫した3つのシーンが紹介されています。

これらは、Apple Watchの機能がポジティブにはたらいたケースではないでしょうか。あまり出くわしたくない体験ですが、テクノロジーの進化がもたらした新しいユーザー体験と言えるでしょう。

このApple Watchによる救助の事例は、事故や転倒などによるアクシデント、外的要因がトリガーになっていますが、最近では、皮膚から発されるシグナルを解析し体内の情報を取得・解析することができるテープ型のセンサーなどもあります。スポーツや医療、介護の分野で研究が進められており、これらウェアラブル端末のテクノロジーが進化することで、よりパーソナルな情報の取得や活用が進み、ユーザーにより近く、寄り添う存在になっていくと考えています。

※注意事項:ヘルスケア機能や健康状態を知るためにECG機能を使っていてもそれがすべてではありません。常に計測していたとしても、異常を示す変化に気づかなかったり、計測された数値だけで健康状態を自己診断するのではなく、あくまで「自分の健康状態を示すものとしてとらえるのではなく、医療の専門家と話し合うきっかけ」とするべきではないかと思います。

 

自分にフォーカスして自分を知るキッカケとなる

ヘルスケアの機能を中心に紹介しましたが、これらを通して自分自身の状態を把握し、具体的に数値化、可視化することで、自分自身と向き合うことができると思います。さらに使い続けることでヘルス機能はパーソナライズ化が進み、身体と心をサポートしたり、改善点や目標が見つかったり、簡易的ではあるものの、現状の体調や状態を確認する指標にすることができます。

これらはポケットの中に収まり、または手首に巻くだけで得ることができる、素晴らしいユーザー体験のひとつで、いわば魔法のようなものではないでしょうか。

 

まとめ

今回はiOS(Watch OS)のヘルスケア機能を通して得られるユーザー体験の一部を考察しました。生活に寄り添う便利な機能を使いこなすことで、自分を知り、意識をより自分自身にフォーカスできること、またこの記事を読んで、少しでも使ってみたい、ウォーキングや計測だけでも始めてみようかな、など心の動きを生むことができていれば幸いです。

正式リリース間近の「iOS 16」ではヘルスケア機能が大きくアップデートされ、「服薬」を使って服用している薬の管理や確認ができるようになることがアナウンスされています。また紹介したヘルスケアアプリ以外にもすでにさまざまなアプリやサービスが提供されているので、それらを連携することで機能を拡張し、自分好みにパーソナライズしてみてはいかがでしょうか。

次回は、AI(人工知能)を搭載した、RAW現像もできる画像編集ソフトLuminarシリーズの最新版「Luminar Neo」について考察していきます。

以上、新谷でした。ありがとうございました!!

 

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今回の記事はウェブマガジン「CreatorZine(クリエイタージン)」さんに寄稿させていただいた記事の追記、更新版となります。企業で働くクリエイターをサポートするウェブマガジンです。こちらもどうぞご覧ください。

 

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