UIUX

2021.09.21

「UXデザイン」についてデザイナー新谷友樹に聞いてみました

  • 「UXデザイン」についてデザイナー新谷友樹に聞いてみました

UXとは「課題の先にあるサービスの価値」

現在デジタルプロダクション「factory4」や個人でも多方面で活動している新谷さん。どのようにしてUIUXデザインに携わるようになったのでしょうか?

新谷:もともとグラフィックデザインやDTPなど印刷物や紙媒体のデザイン、編集を長い間行なっていました。その時に今のfactory4のCOOである藏重から声をかけていただいたんです。僕が入った時点では、アプリ開発やWeb制作などが多かったんですがそこでグラフィックやUIデザインに携わるようになったんです。

新谷さんにとってのUXデザインとはなんですか?

新谷:なんかテーマが直球というか壮大ですよね(笑)。「UX」て「UI」と一緒に語られること多いと思うのですが、UXデザインはレイヤーがかなり違うと思っていてUIはそれに内包されるもの。UXデザインとは「課題の先にあるサービスの価値」だと思っています。
課題を解決したその先にこそ、ユーザーの行きたいゴールがあると思います。だからこそ、その先のゴールを見つけ出してサービスをデザインいく。これが「UXデザイン」ということではないでしょうか。

なるほど。課題の先にあるゴールを目指すということでしょうか?

新谷:UXデザインの価値とは、サービスによってユーザーが抱えている課題が解決されることだと思います。ですが、ただ単に課題を解決すればよいという解釈ではなく、課題があるということは「本来目指したい場所(ゴール)」があるということがポイントであるように思います。その場所がどこなのかを適切にとらえ、ゴールを設定しそこに向かうサービスを作ることが「UXデザインの価値」だと考えています。

 

課題解決型の思考から未来型へ

それでは課題を解決することがUXデザインではないということでしょうか?

新谷:多くのサービスは課題にフォーカスして作られることが多いのではないかと感じています。中心にある課題と向き合って、それを解決していく方法です。

新谷:一方で、ぼくたちが行っているのは適切な未来(ゴール)を定め、現在の場所からつなげていくようにサービスを作るということです。明確な目的があれば、そこに向かうために余計な機能は必要ないと思います。

新谷:たとえば旅行をするときに、目的地に合わせて荷物の内容や時間の使いかたを変えるように、ゴールにたどり着くためになにが最適なのかを考えます。目的地に着くために最低限必要なものだけを残して、それ以外のものはすべて手放す。そうすることで、シンプルかつ無駄のない、本質を捉えたサービスが出来あがります。

この削ぎ落とす作業(デザイン)がとても難しい部分でもあって、簡素になりすぎたり手を抜いているように捉えられてしまうと意味がありません。それでも勇気を持って削っていきます(笑)。

課題を中心に考えると、たくさんの解決方法やアイデアが出てくると思います。たとえば海に出かけるとして、パラソルも浮き輪もいるし、ビーチボールも必要だし、飲み物を冷やすためのクーラーボックスがいるかもしれない。そんな風に、どんどん付け加えられていってしまうんです。

しかしゴールを中心に考えてみると、たとえば「海で綺麗な写真を撮る」、「海でバーベキューをする」という目的を定めれば、必要なものは自ずと見えてきますよね。課題解決型の思考ではなく、その先のゴールにサービスの価値があると考えます。

そのように捉えるようになったのはいつくらいとか、キッカケはあったのでしょうか?

新谷:そうですね。2015年くらいから山梨大学や様々な企業と共創し、桃の害虫やせん孔細菌病の被害を防ぐプロジェクトに参加しています。
すでに課題がたくさんあったのでそれをひたすら解決することにフォーカスしていたんですが、ユーザーや背景、体験がイメージできてなかったというか。そこで現場である農家の方々の話を直接聞いたり、いろんな地域の農場を回ったり、果実の輸出の問題点などを知ることで見えてくるものがあったんです。実際農作業を一緒に手伝わせてもらったり、時には自分の葡萄を育てることもさせていただきました(笑)ユーザーの立場に立った時にその先も見えてくるというか、その気づきの一つになったと思います。

それは貴重な体験でしたね(笑)あと最近はUI/UXデザインについてコラムなども寄稿されていますよね

新谷:はい、弊社のTwitterでiOS 15のUIデザインについて呟いていたんですが、ありがたいことにそれをたまたま見かけた「翔泳社」さんのCreatorZine編集の方が声をかけてくれたのがはじまりです。社内での勉強会などはよく持ち回りで開催するんですが、メディアに寄稿するのはこれがはじめてでした。

ウェブマガジン「CreatorZine」でのデザインコラム

ウェブマガジン「CreatorZine(クリエイタージン)」に寄稿させていただいた記事のアーカイブとなります。企業で働くクリエイターをサポートするウェブマガジンです。こちらもどうぞご覧ください。

新谷:やはり多くの方に見ていただくために、頭の中で整理しますし、ふりかえりにもなっていて、実は新しい発見もあるので楽しみながら書かせていただいています。

それでは最後に最近何か印象に残ったプロダクトやサービスなどはありますか?

新谷:物流サービスのDX化プロジェクトや、少し前になりますがスマホで体温検知するサービス「ThermoDetector」などがあります。この物流のDX化も体温検知サービスもたくさんの課題から発生した案件ではあるんです。これらもいかにユーザーのためのゴールを描くか、課題の先のゴールをどう捉えるかを、日々チームで話し合って取り組んでいます。

最近、課題を解決するための手法として「デザイン思考」や「UXデザイン」などの言葉が注目されていますが、小手先の方法が先行してしまう事例も多くあります。手法ではなくその目的や課題の先にある適切なゴールを捉えて、進めていくことが「サービスの価値」を生み出すのではないでしょうか。
UXデザインとは課題の先にあるゴールを見つけ出して「サービスの価値」をつくること。それにつきるのではないかと思います。

ありがとうございました。UXデザインについてもっと広く、深くいろんな価値に触れてみたいと感じました。

新谷:そうですね。捉え方や目指していくもの、UXの定義は世の中にいくつもあって、その範囲はとても広いのでぼく自身もアンテナを広げて多様なことを経験していく、感じていくことが大切だと思いました。ありがとうございます。

今回のお話では以下のことが印象的でした。

1.UXデザインとは「サービスの価値」課題の先にあるゴールを捉えたどり着くこと。
2.ゴール(未来)からデザインすることでシンプルで無駄のないサービスを作り出す

 

デザイナー紹介 – 新谷友樹

  • 担当デザイナー
  • 大手印刷会社でDTPデザイン・ディレクター、イラストレーターを経験し、現在は株式会社Cosmowayの『factory4 』クリエイティブ部門でグラフィック、UIUXデザイナーとしてWEBデザイン、アプリ開発、動画制作などさまざまなプロジェクトに携わっています。
    2020年より、Adobe Illustrator、Photoshopなどの講師をスタート。趣味はコーヒー、ファッション、イラスト、フィルムカメラ。

    受賞歴

    2016年にTHE FASHION HACK TOKYOとGoogleの新プロジェクトAndroid Experiments OBJECTの共同アイデアソンにデザイナーとして参加し『Android Experiments OBJECT賞』受賞。

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