UIUX

2021.08.26

Googleが「Material Design」を進化させた「Material You(マテリアルユー)」がもたらすものとは

  • Googleが「Material Design」を進化させた「Material You(マテリアルユー)」がもたらすものとは

こんにちは! factory4のUIUXデザイナー新谷です。

以前の記事にてiOS 15で新しく再設計されたSafariのUIについて取りあげました。今回は2021年秋にリリースされるGoogleのAndroid 12の「Material You」について考察していきたいと思います。

 

Google I/O 2021 で発表された「Material You」

Googleの発表会「Google I/O ‘21」にて、Android 12の目玉のひとつとして新たなUIデザイン「Material You」(マテリアルユー)が発表されました。

これは2014年に発表した「Material Design」(マテリアルデザイン)を次の段階に進化させたものです。「Googleアカウントで設定した好みの色と形を簡単に自分好みにでき、Web、Androidなどの環境に自動適用されるカスタムデザイン」です。

UIデザインをユーザー自身がカスタマイズすることができ、よりパーソナルなそれぞれのスタイルに合うようなデザインにすることができます。

※2021年7月27日時点ではAndroid 12 Beta 2を試すことが可能です。GoogleのPixel 3以降なら、簡単にインストールすることができます。

 

Material Designをおさらい

Googleが2014年から提唱してきた新しいUIUXのデザイン概念が「Material Design」です。Googleの製品だけでなく、テクノロジー業界全体のデザインを変革することに役立ってきました。

Material Designのビジョンは、「テクノロジーを人々にとってシンプルで美しく、かつ合理的なものにする」というものです。マルチプラットフォームのデザインフレームワークとして育てられてきたMaterial Designは、物理的法則や配色など明確なガイドラインが定められ、美しく一貫したデジタルエクスペリエンスを構築するためのデザインシステムです。

Googleの製品はこのシステムをベースにデザインされています。そして世界中のデベロッパーやデザイナーがこのシステムを使い、何百万ものアプリをリリースしています。

 

Material DesignからMaterial Themingへ

2018年にはシステムを進化させた「Material Theming」を発表。Material Designのデザインシステムを、ブランドに合わせてカスタマイズするための仕組みです。

出典:Overview – Material Design

従来のMaterial Designでは、ボタンの形状や大きさをガイドラインで定義されていましたが、それに縛られるのではなく、プロダクトやブランドイメージに沿った形でカスタムカラーやコンポーネントの形状がサポートされるのがMaterial Themingです。

テーマに合わせて細部のボタンやカードの形状が決まるため、ページ全体で統一感をもったデザインができるようなシステムになっています。

Material Themingを利用することで表現の幅が広がり、よりブランドアイデンティティに沿ったアプリやサービスを構築することができるようになりました。

それ以外にもダークテーマやツールなど、2019年以降にもMaterial Designは常にアップデートされ続けています。

 

「Material You」におけるデザインの特徴

Material Youは「あなた」が共同クリエイターとなり、ボタンやアイコンの色、サイズ、ステータスバー、マージン、テキストサイズ、フチの有無などをカスタムすることができます。

出典:Google「Unveiling Material You」

まずひとつの大きな特徴として挙げられるのは、全体の色調を統一するパーソナライズ機能です。アプリで使用されるカラーパレットをカスタマイズすることにより、各ユーザーのスタイルと好みに適応することができます。

出典:Google「Android 12 Beta: Designed for you」

ユーザーが設定した壁紙から色を抽出しアルゴリズムで最適なカラーパターンを生成。これにより優勢な色と補完的な色を自動的に判断し、それがロック画面や通知画面、ボリュームコントロール、クイック設定画面など全体的に反映されます。

たとえば、現在のウィジェットは統一感がないものも多いですが、壁紙の色調など統一感を合わせてウィジェットのデザインもアップデートされました。

出典:Google「Android 12 Beta: Designed for you」

iOSでは以前からウィジェットカスタマイズが可能となりパーソナライズ化されていましたが、Androidのウィジェットも「Material You」に対応することで統一感を持たせつつ、整理されていくのではないでしょうか。(ベータ版ではすべてのデザイン要素が反映されてはいないので、今後のアップデートまたは正式版のリリースが待ち遠しいです。)

また、スワイプやスクロールした時のアニメーションはよりなめらか、かつスムーズになった印象。これはインタラクションを(良い意味で)簡素化したことにより、操作性が向上したのだと思います。ロック画面から通知を閉じた時の時計が大きく表示されるアクションにも、それが垣間見えます。

出典:Google「Android 12 Beta: Designed for you」

また、CPUの処理を22%削減したことで、より高速に、電力効率が向上したこともAnodroid 12の大きな改善点です。

これらの構築されたデザインは、すべてのアカウントやアプリ、デバイスにも適用。ウェブやChrome、Wear OS、ウェアラブル、スマートディスプレイなどのすべてにカスタムデザインが反映され、統一感を生み出していきます。

出典:Google「Unveiling Material You」

 

デザインでサービスのパーソナライズ化を

私たちユーザーは、個人差はあると思いますが、常により良い体験を求めています。

実用性はもちろん、オシャレなトレンドを追いかけたり、モダニズムな体験を求めることもあるでしょう。それらのニーズをひとつの概念ですべて兼ね備えることは不可能だと思いますし、根本から変えていく必要があったのだと考えています。

たとえばスマートフォンの特性や機能は進化し続けていますし、サイズも巨大化しています。画一的なアプローチではユーザーのニーズを捉えきれません。

また、生活の多くの領域にGoogleのサービスが使われるようになりました。私自身、仕事でもプライベートでも毎日のように使用しています。

「Material You」はユーザーの行動やニーズに対し、さらに豊かな製品表現を可能とします。それにより、個人のアイデンティティをいっそう強化、かつサポートすることができ、パーソナライズ化を加速させていくと感じました。

 

デバイスに「愛着」を持たせるUXプラットフォームへの進化

従来の「Material Design」の表現はシンプルで美しく、ユーザーにとってはわかりやすい反面、与えられたデザインとしての側面もありました。

たとえばアニメーションの使いかたは、インタラクションするオブジェクトが情報をわかりやすく伝えるためのイチ手段であったり、レイアウトは画一的で、アプリやサービスの個性やブランドとしてのアイデンティティを伝えるメッセージとして配色も使われてきました。

「Material You」のコンセプトは、まさに「You」という言葉に込められた“ユーザー”がよりデバイスに「愛着」を持てるようにし、さまざなユーザーのニーズやアイデンティティに寄り添うことが可能なUIを提供すること。これによって、「パーソナライズされたUXプラットフォーム」に大きく変革しようとしています。

あらゆる状況や場所も普遍的に調和することが「Material You」の目的で、全員にとって美しくシンプルで理解しやすいUIデザインを提供するという概念から、ユーザーに寄り添ったUIの提供へと進化しています。それはアクセシビリティの向上はもちろん、人とデバイスとの関係性をより深く洞察し、つなぎ合わせることで個人の感情を呼び起こし、「愛着」へと昇華されていくのではないでしょうか。

「Google I/O ‘21」での「形が機能に従う代わりに、形が感情に従ったら?」とい問いかけが今後どのように展開し、表現されていくか。そして我々は共同クリエイターとしてどうやって携わり、「愛着」を手にしていくか――。まずはAndroid 12の正式リリースを楽しみに待ちたいと思います。

今回「Material You」を通して「愛着」という言葉でユーザーに寄り添うUIについて触れてきました。次回以降の記事では、UIUXやデザイン思考について紹介していきたいと思います。

 

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今回の記事はウェブマガジン「CreatorZine(クリエイタージン)」さんに寄稿させていただいた記事の追記、更新版となります。
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